福田ゆみ:みなさま、新年明けましておめでとうございます。
税理士法人SASGAを本年もよろしくお願いします。
そして、隅田先生。本年も税務会計講座をよろしくお願いします。


隅田:はい。ゆみさん、本年もよろしくお願いします。

福田ゆみ:早速ですが、今月も所得税について教えていただけるということですが・・・。

隅田:はい。今月は中でも、所得を10種類に区分する点に着目します。
他の税目に、これほど区分するものはありませんから、所得税に特有のものです。


福田ゆみ:確かに、所得を細かく分けますよね。
なぜこんなにも細かく区分するのでしょうか?


隅田:それは、「担税力」という考え方があるからです。

福田ゆみ:「担税力」という言葉、先生は前回も言われていましたね。
“税金を負担する能力”という意味ですよね。


隅田:はい、その通りです。
例えば、毎日働いて300万円稼ぐ人と、職を失って退職金を300万円受け取る人がいるとします。
収入は同じ300万円ですが、担税力は同じと言えるでしょうか?


福田ゆみ:職のある人と、職を失う人ですよね。同じとは思えないです。

隅田:では担税力は、どちらに“より”あると思いますか?

福田ゆみ:職のある人の方です。

隅田:そうですよね。
10人聞けば、10人とも口を揃えて、そう答えるでしょう。
このように、担税力に見合った課税を実現するために、所得を10種類に区分するのです。


福田ゆみ:では、具体的にどのような種類があるのでしょうか?

隅田:それについて1つ1つ、内容も簡潔に説明しつつ列挙します。

@利子所得 預貯金の利子などです。

A配当所得 株の配当などです。

B不動産所得 不動産などの貸し付けによる所得です。

C事業所得 事業による所得です。

D給与所得 給料や賞与などの所得です。

E退職所得 退職金などの所得です。

F山林所得 木を伐採などして売ることによる所得です。

G譲渡所得 不動産や株などを売ることによる所得です。

H一時所得 これは簡潔に説明できません。@〜Gのいずれにも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得です。

I雑所得 @〜Hのいずれにも該当しない所得です。ちなみに、年金所得はここに該当します。

ゆみさん、何か気になるものはありますか? できれば、講座が長くならないよう、簡単に説明できるものをお願いします。


福田ゆみ:笑。
利子所得の申告をしたことがないです。もしかして、申告漏れをしているのでしょうか?


隅田:利子所得が気になるのですね。
もし、ゆみさんが利子所得を申告しなければならないとすれば、ゆみさんは海外に預金口座を持っていることになります。


福田ゆみ:えっ? どういう意味ですか?

隅田:国内の預貯金利子は、「源泉分離課税」と言いまして、銀行が利子から所得税を源泉徴収して国に納付するだけで完結することになっています。
しかし、海外の銀行は、預金の利子から所得税を源泉徴収していたとしても、日本に税金を納付してくれません。
したがって、海外口座を持っている場合のみ、漏れなく申告しましょう、という意味です。


福田ゆみ:そういうことですか。私、海外口座は持ってないです。笑。

隅田:ほかに気になるものはありますか?

福田ゆみ:山林所得が気になります。
奈良県は吉野杉が有名ですよね。申告している人を私は知らないのですが。


隅田:実は私も、全くと言っていいほど見たことがありません。
今の時代、木を切っても高く売れないのです。切っても赤字ですので、切らずに放置しているようです。


福田ゆみ:そうなのですか。

隅田:ただし、1回だけ見たことがあります。

福田ゆみ:それは、どのようなケースだったのですか?

隅田:ある市で、史跡整備の用地確保のため、ある方のご自宅の立ち退きがありました。
そのご自宅に庭木があり、切らざるをえなくなり、その補償金が出ました。
これを山林所得で申告しました。


福田ゆみ:本当ですか。

隅田:はい。山林所得と聞くとつい、すごく大掛かりなものをイメージしてしまいますが、条文にピッタリ合えば小規模でも山林所得です。
ほかに気になるものはありますか?


福田ゆみ:この中にないのですが、非課税所得があると聞いたことがあるのですが・・・?

隅田:「非課税所得」についてですね。非常に大事な内容ですので、今回合わせてお話しします。
世間で「非課税所得」と呼んでいるものは、大きく2つに分かれます。

まず1つ目が、そもそも「所得」に該当しないため、非課税なものです。
例えば、通勤手当や損害保険金などです。
通勤手当は、給与所得に似ていますが、通勤手段への支出の補てんが目的ですから、「所得」ではありません。
損害保険金も、資産の損害により支払を受けるものでしたら、代わりの資産を買うことが目的ですから、「所得」にはならないのです。

もう1つは、「所得」に該当するにもかかわらず、非課税のものです。
つまり、10種類の所得のどれかに区分されるけれども「非課税」、ということです。


福田ゆみ:具体的にはどういうものがあるのでしょうか?

隅田:例えば、ノーベル賞の賞金や、失業保険金などが該当します。
社会政策的に非課税にされているものですね。
ちなみに、以上の大きく2つに分けられる非課税所得は、そのほとんどが所得税法の第9条に書いています。


福田ゆみ:そのように所得税は非課税であっても、相続税や贈与税で課税されるものもあると思うのですが・・・。

隅田:いい指摘ですね。
所得税以外の税目の対象になる可能性があります。
相続により取得した財産や、個人からプレゼントでもらった財産は、どちらも「非課税所得」ではありますが、相続税や贈与税の対象になる可能性が高いですので、注意しましょう。
詳しくは、相続税や贈与税がテーマの時にお話しします。


福田ゆみ:所得の種類や非課税所得についてよく分かりました。

隅田:では、今月の講座はここまでとします。

福田ゆみ:隅田先生、今月もありがとうございました。

Point
1.所得税では、本人の担税力に見合った課税を実現するため、所得を10種類に区分する。
2.そもそも「所得」に該当しないものは非課税。社会政策的な理由による「非課税所得」もある。
3.所得税の対象でなくても、他の税目(相続税・贈与税)の対象になるものもある。