福田ゆみ:皆さん、こんにちは。福田ゆみです。
隅田先生、今月も税務会計講座をよろしくお願いします。


隅田:はい。よろしくお願いします。
今月からは「法人税」をテーマに話していきます。
法人税とは、文字通り、法人にかける税金のことです。
さてさっそくですが、ゆみさんに質問です。“なぜ法人は税金が課せられるのか”、考えたことがありますか?


福田ゆみ“なぜ法人は税金が課せられるのか・・・?”。すみません、考えたこともなかったです。


隅田:いえいえ、ゆみさんに限らず、ほとんどの人は考えたこともないでしょう。
そこで今回はこの疑問に答えたいのですが、より深く理解していただきたいですので、予備知識として、そもそもの“法人とはなんぞや”から始めます。


福田ゆみ:では、“法人とは何”でしょうか?

隅田:法人とは、法律によって人格を与えられた団体を言います。
ここで“人格”とは、権利能力を持っているということです。
権利能力があると、契約の当事者になれます。つまり、モノの売買や貸し借りができる、という意味です。
例えば、ある人がテニスをするために、テニスコートを借りにいくとすると、問題なく借りられると思います。その人が“人格”を持っているからです。
やがて、テニス仲間が集まってサークルができたとします。このような、何かの目的の下に集まったグループを「社団」と言います。さて、テニス仲間みんなでテニスコートを使いたい時に、原則は、どうすれば使えると思いますか?


福田ゆみ:それは、一人ひとりがテニスコートを借りれば使えると思います。でも、とても不便ですよね。

隅田:その通りで、とても面倒です。それに比べ、代表者を決めて、代表者が借りる手続きをするだけでみんなが使えるようになれば、とても便利です。
このように、便利さを追求した先にあるのが法人なのです。
もっとも、テニスサークルは法人にしなくてもテニスコートを借りられます。


福田ゆみ:法人にしなければならないという、何かのボーダーラインでもあるのでしょうか?

隅田:その目安として1つ考えられるのは、社会への影響の大きさですね。
例えば、お金を借りて商売をする社団は、お金を借りる行為も、商売という行為も、社会への影響が大きいです。
商売のためと言ってお金を借りておきながら、遊びに使い果たされてはなりません。


福田ゆみ:法人には、そうならない仕組みがあるのでしょうか?

隅田:はい、あります。法人を設立するには、「定款」という、いわば法人の憲法のようなものを作り、そこに「目的」を記載することになっています。
書式例もあります。例えば、株式会社の場合は、
> 当会社は、次の事業を行うことを目的とする。
> (1) ○○の製造及び販売
> (2) 前号に附帯又は関連する一切の事業
という具合です。
このように記載をしますから、その逆で、法人には定款に記載のない行為についての権利能力はない、と考えられています。


福田ゆみ:なるほど。これで、借金が遊びに使われる心配はありませんね。


隅田:はい、法人にはそういう仕組みがあるのです。
そして、もう1つの予備知識なのですが、法人を設立するうえで、「出資」というものがあります。
例えば、資本金1000万円の株式会社を設立する場合、1000万円の出資をしなければなりません。
仮に、2人の人がそれぞれ、800万円と200万円の出資をしたとします。株式会社ではこの出資者のことを株主と言うのですが、2人の株主が1000万円で作った会社ですから、その会社は紛れもなく2人が所有しているものであり、持分割合は8:2です。
そして、事業を続けていく中で順調に財産を蓄えれば、そのまま会社が抱えていてもいいのですが、配当することで株主の手に渡ります。
また、この会社が目的を完全に果たしたり、廃業を決めたりすれば、解散・清算することになりますが、ここでも残りの全財産は株主の手に渡ります。
つまり、遅かれ早かれ、会社の儲けは個人の手に渡るのです。
ちなみに、「営利」という言葉がありますが、これは「出資者に配当する」という意味です。


福田ゆみ:ということは、今回のテーマの、“なぜ法人は税金が課せられるのか”というのは・・・。

隅田:はい。“どのタイミングで税金を課すのがふさわしいか”と読み替えると、遅かれ早かれ個人の儲けになり、その時に課税すればいいのに、なぜ法人に課税するのか、という疑問になるのです。
実際に2つの対立する学説がありまして、「法人擬制説」と「法人実体説」と言われるものです。


福田ゆみ:それぞれ、どういう意味でしょうか?

隅田:「法人擬制説」とは、簡単に言いますと、法人は一定の目的の下に便宜上仮に設立されたものですから、個人に所得が生じた時に課税すべきだ、という考え方です。
もう一方の「法人実体説」とは、法人は個人とは別個独立したものですから、法人に所得が生じた時に課税すべきだ、という考え方です。


福田ゆみ:う〜ん、どちらも理にかなっていますね。
では、実際の制度はどうなっているのでしょうか?


隅田:法人にも課税し、個人にも「配当所得」として課税する、という“いいとこ取り”の制度になっています。

福田ゆみ:そんなオチなのですか!?

隅田:いえいえ、まだ終わりではありません。
今度は、“なぜ法人は税金が課せられるのか”という疑問を、「目的」という切り口から考えてみます。
つまり、法人は定款に記載した目的だけを行うのですから、その目的が公益に資するものであれば、大いに活動していただきたいものです。もしそのような法人に税金を課せば、活動資金を奪い取ることになってしまいます。


福田ゆみ:公益に資する事業・・・。そういう会社はたくさんありますよね。

隅田:はい。生活に必要なインフラの会社もそうですし、医療や社会福祉の会社もあります。
突き詰めれば、どの法人も行っていることになるかもしれません。
もちろん、さすがにすべての法人が“公益に資するから非課税”というわけにはいきません。
しかし、非課税の法人は現実に存在します。


福田ゆみ:では、課税される法人と非課税の法人とは、何が違うのでしょうか?

隅田:これは、法人の種類によって分けています。
何十種類とありますが、法人税ではこれらを次の4つに分類します。
1.普通法人 ・・・ 株式会社や医療法人はここに入ります。
2.協同組合等 ・・・ 信用金庫や農業協同組合はここに入ります。
3.公益法人等 ・・・ 学校法人やNPO法人はここに入ります。
4.公共法人 ・・・ 国や地方公共団体が運営している法人です。


福田ゆみ:それぞれに違いがあるのですか?

隅田:はい。そうです。
普通法人は、所得のすべてが課税されます。
協同組合等は、すべて課税される点では普通法人と同じですが、普通法人よりも低い「軽減税率」が適用される点で違います。
その次の公益法人等は、文字通り公益に関する事業を行うのはもちろん、営利を目的としないこと、主務官庁の許可を得ることが必要で、法人税は非課税なのですが、収益事業から生じた所得は課税されることになっています。
そして公共法人は、完全非課税です。


福田ゆみ:今の説明の途中に「営利」という言葉が出てきましたよね。
公益法人等は営利を目的としない、とのことですが、逆に普通法人と協同組合等は営利を目的としていますよね。ということは・・・。


隅田:いい指摘ですね。
この分類は、まさに「営利性」という観点からの分類ということもできるのです。
つまり、「営利を目的としている法人は課税される」、「営利を目的としていない法人は非課税」、ということです。


福田ゆみ:こうして見ると、定款にどれだけ公益に資する事業をやると謳ってみても、ほぼ確実に税金がかかるということですね。

隅田:そういうことです。
私たちは、法人には税金が課せられるものといつの間にか刷り込まれて、“なぜ税金が課せられるのか”という疑問すら沸かないのかもしれません。


福田ゆみ:法人とその税金について、よく分かりました。

隅田:ゆみさんがよく分かったところで、今回の“なぜ法人は税金が課せられるのか”についてのお話しは終わります。

福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。

Point
1.法人とは、一定の目的の下に設立されるもので、儲けは所有者である出資者の手に渡る。
2.制度上、法人の所得は課税され、個人への配当所得も課税される。
3.普通法人・協同組合等はすべての所得が課税され、公益法人等は原則として非課税である。