福田ゆみ:皆さんこんにちは。福田ゆみです。
まだ5月なのに、早くも初夏を思わせる陽気ですね。
税務会計講座、今月も隅田先生、よろしくお願いします。


隅田:はい。よろしくお願いします。
シリーズでお話ししている法人税の3回目は、欠損金についてです。


福田ゆみ:欠損金ということは、“マイナス”ということでしょうか。

隅田:はい、そうです。
前回、所得の説明をするのに、益金と損金のお話をしました。
この、益金から損金を引いて、マイナスになった時の金額を「欠損金額」といいます。


福田ゆみ:つまり、“マイナスの所得”ということですか?

隅田:簡単に言えばそういうことなのですが、厳密に言うと違います。
そもそも「所得金額」というのは、ゼロ以上の金額なのです。
つまり、益金から損金を引いてプラスであれば、もちろんそれが「所得金額」なのですが、マイナスであれば、「所得金額」はゼロになります。
このため、“マイナスの所得”というのは言葉の意味からして間違いなのです。


福田ゆみ:そもそも所得にマイナスはないのですね。笑。
それで、欠損金は将来の所得から引ける、と聞いたことがあるのですが・・・。


隅田:はい、そのとおりです。
そもそも法人税には、「単年度主義」という考え方があります。課税の都合で便宜的に年度というもので区切り、その1年の所得を計算する、ということです。
ここで、所得がプラスならば課税ということがあるのですが、マイナスであれば何もありません。
しかし、実際の法人の活動は年度の区切りに関わらず継続していますから、翌年以降の所得金額から欠損金を控除することが認められています。
これを、「欠損金の繰越控除制度」と言います。


福田ゆみ:この繰越しには期限があるのですよね?

隅田:そこなのですが、ただ期限があるのではありません。“青色申告書を提出した事業年度の欠損金”に期限があるのです。
つまり、青色申告であれば、その年度の欠損金額はおよそ正確に計算していると考えられますよね。


福田ゆみ:ちゃんと帳簿を付けている、領収書も保存している、だから認められる、ということですね。

隅田:そういうことです。
このような欠損金は一般に、「青色欠損金」と呼ばれています。


福田ゆみ:では、どれだけ繰越しができるのですか?

隅田:これについては何度も税制改正があり、今回からは10年繰越せるようになりました。

福田ゆみ:そんなに改正されているのですか?

隅田:はい。昔は5年でした。それが7年になり、9年になり、今回10年にまで伸びたのです。

福田ゆみ:過去の欠損金もそれだけ繰越せるようになったのですか?

隅田:そうではありません。あくまでも改正された後の欠損金だけです。
例えば、今回の10年に伸びた改正税法は平成29年6月23日に公布され、平成30年4月1日に施行されています。


福田ゆみ:“公布”と“施行”・・・?

隅田:間隔があるのは、周知期間が必要だからです。今の憲法も、文化の日に当たる11月3日に公布してから6ヶ月の周知期間を経て、5月3日に施行されていますよね。
そして、実際に10年繰越せる事業年度は、平成30年4月1日以降に開始した事業年度に限定されています。


福田ゆみ:同じ日なのですね!

隅田:はい。ですから、過去の欠損金まで伸びるわけではありません。

福田ゆみ:それにしても、どんどん伸びているのですね。
何か理由があるのでしょうか?


隅田:それだけ、欠損金を抱えた法人が多いのでしょう。
国税庁が毎年「黒字申告割合」というものを公表しているのですが、平成28年度は33.2%です。


福田ゆみ:えっ! それでは、3分の2以上が赤字なのですか?

隅田:これでも、ここ数年は上昇傾向にあるそうですよ。
このような状況では、9年繰越してもまだ控除しきれずに期限切れを迎えてしまう会社も多いに違いありません。
そして、このような税制改正は、いろんな団体が『意見書』や『要望書』というものを出し、それらを踏まえて行われているのです。経団連も『提言』というものを出していますし、日本税理士会連合会や日本公認会計士協会も出しています。


福田ゆみ:いろんなところの意見を聞いて、10年に伸びたのですね。

隅田:さて、欠損金の繰越控除制度で、もう1つ知ってもらいたいのが、大企業に存在する「繰越控除限度額」です。
中小企業には、限度額などありません。つまり、100の繰越欠損金があり、今年の所得が100ならば、100の控除ができます。
大企業も、昔は同様に限度額がなかったのですが、比較的最近の改正により限度額が設けられるようになりました。


福田ゆみ:どのような限度額でしょうか?

隅田:所得金額の80%までしか控除できない、というものです。
100の繰越欠損金があり、今年の所得が100ならば、80しか控除できず、残り20はさらに翌年以降に繰越す、ということです。
そしてこの割合も、何度も引き下げる改正があり、80%から65%になり、60%になり、55%になり、今回(平成30年4月1日以降に開始した事業年度)から50%になりました。


福田ゆみ:こちらもずいぶん改正されているのですね。

隅田:はい。これは国の税収の維持と深い関係があります。
日本の法人税率は高いと言われています。日本企業の国際競争力を高めるためにも、また、国外からの企業の誘致を進めるためにも、税率を下げる必要があるのです。


福田ゆみ:すると、税率が下がれば税収も減りますよね。

隅田:そうなのです。
そこで、税率は下がっても税収は維持できるよう、いろんな改正を行っています。
その1つが、大企業への「繰越控除限度額」の設定とその割合の引き下げなのです。


福田ゆみ:法人税の税収はいくらですか?

隅田:財務省の発表によると、平成29年度の予算では、57.7兆円の一般会計税収を見込み、そのうち法人税は21.5%の12.4兆円を見込んでいました。
法人税は、所得税・消費税に並ぶ3大税目ですから、法人税の減収は避けたいのです。


福田ゆみ:税収を維持するために、一方では“増やす”改正をし、もう一方で“減らす”改正をしているのですね。

隅田:そうです。いわば2つは“抱き合わせ”なのです。

福田ゆみ:ところで、ある年に欠損になっても、前の年に税金を払っていることもありますよね。
その税金を返してもらう制度はあるのでしょうか?


隅田:いい質問ですね。
「欠損金の繰戻し還付」という制度があります。
つまり、青色の欠損金額を前事業年度の所得金額に繰り戻すことにより、前事業年度に係る法人税の一部又は全部の還付が受けられる、というものです。
ただし、この制度は原則として、中小企業の中でも「中小企業者等」と言われる一部の企業にのみ認められています。


福田ゆみ:将来の所得と控除するために繰越すこともでき、前年の法人税の還付を受けるために繰り戻すこともできるのが欠損金なのですね。
欠損金について、よく分かりました。


隅田:これで、シリーズでお話しした法人税の講座を終わります。

福田ゆみ:隅田先生、どうもありがとうございました。

Point
1.いわゆる「青色欠損金」は、10年繰越せる。
2.大企業には、所得金額の50%の「欠損金の繰越控除限度額」がある。
3.中小企業者等は、「欠損金の繰戻し還付制度」により、前事業年度の法人税の還付を受けることができる。