福田ゆみ:こんにちは、福田ゆみです。
まもなく節分、そして立春といっても、寒い日が続いていますね。寒中お見舞い申し上げます。
では隅田先生、今月もよろしくお願いします。


隅田:はい、よろしくお願いします。
今月は贈与税の最後に、「相続時精算課税制度」をお話しします。


福田ゆみ:「相続時精算課税制度」、私も聞いたことがありますが、改めて、どういう制度でしょうか?

隅田:これは贈与税の特例という位置づけです。
適用にはいくつかの要件があるのですが、それらの要件を満たせば、受贈者が納めなければならない贈与税額が、贈与財産の額が2,500 万円までは無税になります。
ただし、贈与財産の額が2,500 万円を超えますと、超えた額の20%の贈与税を納める、というものです。


福田ゆみ:そして、それだけではないのですよね。

隅田:はい。やがて贈与者が死亡すれば相続税の計算・申告をします。このときに、相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産は相続財産に含めて相続税額を計算することになります。
こうして求まった相続税額が、すでに納付している贈与税額よりも多ければ、差額を納めます。逆に少なければ、税金は還付されます。
以上が、「相続時精算課税制度」の大まかな内容です。


福田ゆみ:相続のときに差額を納める、もしくは還付になる。文字通り「相続時」に「精算」なのですね。ということは、・・・。
2回に渡ってお話のあった生前贈与は、相続税対策として利用できるものですよね。つまり、相続税と贈与税の合計を少なくできるというお話でした。
でも、この「相続時精算課税」を利用しても・・・。


隅田:はい、合計は一緒です。
ですが、メリットは十分にあります。
まず、生前のうちに次世代へ、比較的少額の税額で財産を移転させることができます。
例えば不動産賃貸事業を行っているご高齢がいて、不動産の管理を若い頃はできたものの、歳を重ねるにつれてままならなくなり、お子さんが代わりに動いているケースはどうでしょう。
もしご自身の名義のままでは、契約の都度ご自身が動かなければなりません。


福田ゆみ:確かに、お子さんの名義にした方が、何かとスムーズですね。

隅田:この事例には、「相続時精算課税」にするメリットがさらにあります。
賃貸不動産は収益物件ですので、名義人に賃貸収入が入ってきます。
これがご高齢の名義のままでは単純にご高齢の財産が増えていきますが、名義をお子さんに変えれば、お子さんの財産が増えていくことになります。
このように、将来の財産増加を見越した相続税対策に利用できるのです。


福田ゆみ:なるほど。収益物件の贈与に効果があるのですね。

隅田:次のメリットですが、相続税額を計算するときの課税価額を贈与時の評価額に固定化できます。
例えば不動産や会社株式は、将来値上がりする可能性があります。所有財産にこれらがあり、値上がりしたタイミングで相続が発生すれば当然に相続税額も多くなります。
そのような財産でも、相続時精算課税制度により贈与していれば、相続税額を計算するときの課税価額は、贈与時の評価額とすることになっています。
とすると、もしこれらの財産の評価額がコントロールでき、比較的低く抑えた時に贈与すれば、トータルの税額も少なく抑えられることになります。


福田ゆみ:つまり、「相続時精算課税」を利用して税額合計を減らすことが・・・。

隅田:できる、ということです。
もちろん、うまくコントロールできず逆の結果になることもありますので、必ずしもメリットと呼べるわけではありません。


福田ゆみ:でも、先生のことですから実際は、ほとんどの場合は減らせているのではないのですか。笑。

隅田:そうなるように努力しています。
しかし、建物については経年により評価額は減少しますから、おすすめするのをためらいますね。別に主たる目的があるなら別ですが。


福田ゆみ:「相続時精算課税」のメリットがよく分かりました。
では反対にデメリットはありますか?


隅田:「相続時精算課税制度」の適用を一度受ければ、以後の贈与は少額であっても、この制度の対象になるのが最大のデメリットです。
一度選択したら撤回もできません。


福田ゆみ:それはどういうことですか?

隅田:「相続時精算課税制度」の適用を、その年のその特定の贈与だけに限ったものと理解しては間違いです。
適用を受けた年から贈与者が死亡するまでの贈与全てに適用されるのがこの制度です。適用される以上、以後の贈与は税務署に申告しなければなりません。
つまり、通常は110 万円までならば無税で贈与できますが、そのような贈与も今後は制度の対象になるのです。


福田ゆみ:すると、適用最初の贈与額が2500 万円未満ならばもちろん無税ですが、その後の贈与の積み重ねで2500 万円を超えると・・・。

隅田:超えた額に対して20%の税金を納めることになります。
このように聞くと、“今後一切の贈与も対象ですか?”と思われるかもしれませんが、あくまで「相続時精算課税制度」の適用を受けた受贈者に対する贈与のみが対象です。未だ適用を受けていない人への贈与は通常の贈与となりますので、110 万円の基礎控除があります。


福田ゆみ:では、前回お話ししていただいた、住宅取得資金や教育資金、結婚・子育て資金の贈与との関係は・・・?

隅田:これらは、「相続時精算課税制度」適用後でも利用できます。心配せず相続税対策に利用してください。

福田ゆみ:別枠なのですね。
もう1つ気になったことが。過去の贈与の額を忘れてしまって、2500 万円を超えたかどうか分からなくなったら、どうしたらいいのですか?


隅田:その心配についても、税務署に申請すれば過去の申告内容を開示してくれます。

福田ゆみ:それなら安心ですね。

隅田:では、「相続時精算課税制度」の細かい要件を説明していきます。
まず、贈与者と受贈者の要件は、贈与者は60 歳以上(その年の1月1日において)、受贈者は贈与者の推定相続人である直系卑属のうち20 歳以上(その年の1月1日において)である子や孫です。
メリットの1番目に挙げたことの繰り返しになりますが、財産をご高齢の管理下から次世代の管理下にすることがこの制度の趣旨ですから、当然と言えます。


福田ゆみ:高齢化も進んでいますしね。

隅田:次に、初めて適用を受けるときには添付書類がいくつかあります。
まず、「相続時精算課税選択届出書」という、所定の様式の届出書があります。
次に、受贈者側の書類として、贈与者の直系卑属であることを証明するために戸籍謄本または抄本が必要です。戸籍にはその人の両親の名前がありますので、もし受贈者が子でしたらその人の戸籍だけで十分ですが、これが孫でしたら2代に渡る戸籍が必要になります。
そして、贈与者側の書類として、住民票の写しまたは戸籍の附票の写しが必要です。これらに記載のある、贈与者の60 歳以後の住所を税務署に知らせるためです。


福田ゆみ:いくつも提出しなければならないのですね。

隅田:そして、初めての年は、先ほどの届出書を原則として翌年の贈与税申告期限までに提出する必要があります。
おそらく初めの年の贈与の額は高額でしょうから、遅れた場合に適用される通常の贈与税率は大変なものになります。


福田ゆみ:ほんと、遅れたら大変なことになりますね。
そういえば、贈与税の申告期間はいつですか?


隅田:2月1日から3月15日ですから、申告期限は3月15日です。
この提出期限が早まる例外もありまして、贈与者がその年に死亡した場合で、相続税申告書の提出期限である10か月後の日が、この3月15日よりも早い日に当たれば、相続税申告書の提出期限の日と同じになる、というものです。
つまり、死亡日が5月14日までであれば、期限は翌年3月15日よりも前になる、ということです。


福田ゆみ:いま気になったのですが、贈与者が死亡した年の生前中の贈与にも贈与税がかかるのですか?

隅田:実は、贈与者が死亡した年の、相続または遺贈により財産を取得した相続人への生前贈与財産は例外的に、贈与がなかったものとみなし、贈与税はかからない代わりに、相続財産に含めて相続税額を計算することになっています。つまり、相続税の申告だけですね。
しかし、「相続時精算課税選択届出書」を提出すれば、例外の例外で、贈与の事実の通りに贈与税の申告をし、同時またはほぼ同時に相続税の申告もする、ということです。
といっても、贈与の日から死亡日までの間に評価額が急激に上がることでもない限り、適用するメリットはないでしょう。
以上が「相続時精算課税制度」です。


福田ゆみ:贈与税は奥が深いのですね。この3ヶ月に多くのことを学ばせていただきました。

隅田:ゆみさんも満足してくれたようで光栄です。
では、3か月に渡った贈与税の講座、以上にいたします。


福田ゆみ:先生、どうもありがとうございました。

Point
1.「相続時精算課税制度」の下での贈与税額は、贈与財産が2500 万円までは無税、超過額には税率は20%。
2.相続時精算課税制度による贈与は、収益物件や将来値上がりする見込みの財産の相続税対策に効果的。
3.相続時精算課税制度を選択した受贈者は、その年以降の贈与は全てこの制度の対象に。